Jakob×Architect

Jakobが織りなす、
次世代の半外部空間。

建築家 川島 範久
/ 建築物 REVZO虎ノ門
Jakob > About > 川島範久建築設計事務所 主宰 建築家 川島 範久 インタビュー
01

Philosophy 建築に対する哲学・世界観

01

人間以外の他者への
想像力を高める建築。

地球環境が危機を迎えている現代、建築や都市、地域は、どのように変わっていかなければならないのかということを考えながら、日々の実践活動や研究活動に取り組んでいます。昨今言われているような、脱炭素、省エネといったことももちろん重要ですが、私が建築家として特に重視しているのは、建築や都市空間における「暮らし」を通じて人間の意識が変わっていくことです。

建築は人間の日々の暮らしの場です。だからこそ、建築や都市の在り方は、人間の意識の変化に非常に大きな影響をもたらすものだと考えています。私たちの暮らしが人間以外の様々なもの、環境に取り巻かれて成立しているものであるということを、そこに暮らす人が当たり前に感じることができ、私たちの生活を取り巻くあらゆる他者に対して意識的になることができる。そんな建築、都市空間をつくることを目指しています。

それには、素材選びが非常に重要になります。建築においてはこれまで効率を追求し「変化しない」ことが重視されてきたため、一般的に、変化しない素材が使用されることが多いと思います。しかし私は、変化する素材、変化を美しく感じられる素材を選ぶことで、人間中心ではない、自分以外のものに対する想像力が持てる建築をつくっていきたいと考えています。

02 REVZO虎ノ門 外観 Photo ⒸKenta Hasegawa REVZO虎ノ門 バルコニー PhotoⒸKenta Hasegawa

Work Jakobの使用事例

02

溢れんばかりの植栽のまわりを
蝶や鳥が舞う。
人と自然の共生を実現した
「REVZO虎ノ門」。

人にも環境にも配慮した空間をつくり出すため素材を重視することは、コストがかかると思われがちですが、素朴なデザインのアイデアで自然の変化を感じることのできる建築を実現することは可能だと考えています。今回私が「REVZO虎ノ門」という案件で、Jakobを使って実現したこともその一例です。

「REVZO虎ノ門」は、REVZOという、中央日本土地建物による新しい中規模賃貸オフィスブランドの第1号です。社会背景として、近年、再開発を伴う大規模な高層オフィスが多く建てられているのに対し、ハイクオリティな中規模賃貸オフィスが少ないという現状があり、中央日本土地建物はシリーズとして商品化できる中規模賃貸オフィスのプロトタイプの開発を進めていました。私は、その開発及びブランディングを図るためのデザインパートナーをつとめつつ、一棟目の「REVZO虎ノ門」については共同設計者として関わらせていただきました。

REVZOシリーズは、自然とつながる、自然の変化が感じられるオフィスというコンセプトを実現するべく、一般的なオフィスビルとは異なる「構成」としています。
一般的な同規模のオフィスでは通り側に最大限ワイドを取るようにテナントスペースを配して、その背面にコアを配置します。しかし、「REVZO虎ノ門」では、コアをスプリットし、建物両脇にコアを配置しました。これによって通りの反対側にも開口部を設けることができ、テナントスペース全体で十分な自然換気と採光が可能になっています。さらに、前面道路側に人が外に出ることができる半外部空間がつくられていることもこの建物の特長です。外観の表現としては、それ自体が主張せず、背景になりながらも、全体的なブランドイメージにもつながるものを追求した結果「額縁のようなデザイン」にたどり着きました。

REVZO虎ノ門 バルコニー PhotoⒸOHKI DAISUKE

こうして生まれたファサードが、「REVZO虎ノ門」の外観の特長になっています。ファサードには、中で働く人たちの活動が外にあふれ出してほしいと考えていました。特にバルコニー側のファサードには、片引き窓や網戸、排煙窓、屋外避難階段など、様々なものが前面に出てきます。それら全てを包み込むような、あふれ出してくる人々の活動をやわらかく包んでくれる。スクリーンのようなものが必要だと考えました。しかも、開放感もありながら、人間が安心感を得られて、植物のよりどころにもなるようなもの。
その際、一般的な金網も検討したのですが、Jakobのステンレスメッシュは、スリーブがグリッド状になっていることで、境界面としての存在感を発揮しつつも、透過性がある。そんなあいまいな存在になってくれる点に魅力を感じました。Jakob製品の中でもピッチの大きいものをあえて選び、見る角度によっては金網の存在感が消えるのに、見方を変えればスクリーンのような存在感が出る。Jakobをつかったことによって、独特の表情をもつファサードを実現することができました。また、このステンレスの金網が、植物のよりどころにもなっていて、メッシュに蔦が絡み、植栽が溢れんばかりに育っています。この植栽には、四季によって変化するものや実がなる植物を選んでいます。そうすると、実を食べにきた鳥がメッシュをすり抜けて入ってきたり、蝶も舞い込んでくるなど、まさに人間以外との共存というものをJakobが実現してくれたと言えます。

03 REVZO虎ノ門 外観 Ⓒarchitecturephoto

Vision Jakobを通じて見据えているビジョン・広がる可能性

03

Jakobによって広がる
都市における
半外部空間の可能性。

今回Jakobを利用した目的は2つ。1つは人が外に出ることができる安全な空間をつくるため。ファサードのデザインの一部にもなりつつ、だけども透明でもある。そういった境界面をつくることで、人が安全に外に出ることができる半外部空間・バルコニー空間をつくることができました。もう一つは、プランターをメッシュの手前の下に置き、そこから蔦性の植物などが上がっていけるようにしました。Jakobはステンレスなので、いわゆる自然素材というものではないですが、そこに植物・人間が介在しやすいようにデザインすることで、自然の変化をより近くに感じられるような空間をつくるということに適した製品でした。

Jakobの特長的なポイントの一つは、存在感が消せることです。メッシュの細さによって生まれる透過性の高さによって、金網が存在しないようにも見える。ですが見る角度によっては、留め具がグリッド状に均等に並んでることによって、存在感も出してくれる。
自然に溶け込む透過性と安全性を主張する存在感をあわせもつ。その両面性は非常に魅力的です。

これまでの建築では内部空間の快適性を高めることや省エネルギー性能を高める事に躍起になってきましたが、コロナ禍の今、外部空間の重要性が増していると感じています。たとえばカフェテラスが今まで以上に人気を集めていたり、住宅ではバルコニーで仕事をする人が増えたり。半外部空間の価値が見直されています。
今後、高層階で安全面を担保しながら自然と共存できる気持ちの良い半外部空間をつくっていくというニーズが一層増えていくであろうことを考えた時に、Jakobはその可能性を広げてくれるものだと感じています。

これまで追求されてきた「快適性」は、環境が一定に保たれた、不快さを感じない空間でした。しかし、変化のない空間で暮らしていくことは、不快さはないかもしれませんが、歓び(Delight)もありません。人間が生活していく上で、ふと気づくと風が吹いていて、光が入ってきている、植物には実がなっていて鳥が飛んでくる…、そういった変化を身近に感じることは重要です。変化を通して歓びを感じられることが、真の心地よさであり、人間の健康、さらには創造性を高めてくれるものだと私は考えています。Jakobは、この世界観を実現していく上で、多様な使い方ができる可能性をもつ製品です。

川島範久建築設計事務所 主宰 建築家 川島 範久

1982年神奈川県生まれ。2005年東京大学卒業。2007年東京大学大学院修士課程修了後、日建設計勤務(〜2014年)。2012年UCバークレー客員研究員。2016年東京大学大学院博士課程 修了、博士(工学)取得 。2014年より東京工業大学助教を経て、2020年より明治大学専任講師。日本建築学会賞(作品)、サステナブル住宅賞 国土交通大臣賞、住まいの環境デザイン・アワード グランプリ、JIA環境建築賞グランプリ(JIA環境大賞)、前田工学賞など受賞多数。

採用されたJakob製品

  • ウェブネット:1.5mm
  • メッシュ開口:100mm
製品詳細 / 簡易積算
お問い合わせ CONTACT
CONTACT