Daiko

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自然と溶け合う体感をつくる。

INSIGHT #007

アドベンチャーから気づきや学びを

プロジェクトアドベンチャージャパンはもともと教育からスタートしてるので、レジャーを開発する会社ではないんですよね。どちらかというと、アドベンチャーというキーワードを武器に一歩踏み出す体験をしてもらい、気づきや学びに繋げたい。そのためにジップラインをどう体験してもらうかを考えていて、実はあまりレジャー的な視点だけでビジネスを進めたくないんです。
もちろん来場するお客さんは楽しみたい気持ちだけでいいんですけど、私たちのゴールとしてはクライアント様が私たちの考えに賛同していて、そのスタッフさんがお客さんに伝えるところまで持って行くことが理想です。
でも、子どもたちに対して、豊かな心を育む活動をしていこうとか、器の大きな人間社会を実現しようと言うとよくわからない。そこに向かっていくためには、どういう風にアプローチしたらいいのかを社員みんなで考えています。子どもたちってその場ではすごくいい感受性を表現するのですが、家庭に戻ったり学校に行ったりすると、当然ながら親をはじめ大人の影響をすごく受けるんですよね。子どもたちは純粋にこうしたいと思っていても、周りの環境によって制限がどんどんかかっていく・・そうすると結局子どもたちの思ってることが伸びていかない。やはりまずは大人、先生やご両親に活動の趣旨を理解してもらう事が大切だと思っています。
私は2代目の代表をさせていただいていますが、先代は「将来のゴールは会社の解散!」って言ってました。それは何かというと、いま私たちの言ってるような事とか、考え方が当たり前になってきたら、別にそれを伝える必要はないじゃないかと。そうなった時にはもう会社いらないよねって。(笑)

ジップラインの設計で大事にしていることは

施主さんからここでやりたいっていう話をいただいて、現地調査にお伺いすることになります。調査の結果、立地的にこのプロジェクトは厳しいですとか、こういう形だったらできますっていう提案をさせていただいています。意見交換を重ねながら、ある程度施主さんの希望と費用がマッチしたら、本格的に設計を始めるような感じです。
ジップラインって上から下に滑るものだから、高低差が必要だと思うじゃないですか。でも意外と高低差がありすぎて設置できないケースもあります。山の斜度はもちろん一定ではないので、途中で足が地面に当たってしまうから、スタート地点を高く上げざるを得ないとか、いろんな条件を考慮して設計をすることになります。
過去に長さ600mのジップラインで、スタート地点とゴール地点で高低差が40mくらいある物件がありました。これは結構高低差のある立地なのですが、もう少しスピードを出したいというクライアント様の要望があって、設計をギリギリのところまで攻めていって、結果として高さ18mのスタートデッキを作りました。ここまで勾配を設けないと難しいとなと。勾配もとても重要な要素なんです。


初期のジップラインは、傾斜を考えて自然にスピードを落としていく設計から始まってるんですよね。ゴール地点でのスピードは時速10キロ以内にしないと人が安全に止まれない。那須高原りんどう湖ファミリー牧場のジップラインもそのような設計だったのですが、ここが大綱さんとお取引を開始してから、初めての大きな物件でした。
当時、たまたま一旦コストの見直しをしようってことになって、何社か相見積もりを取ったんですよ。その時の見積もりが一番安かったっていう表現をするとそうなんですけど、その価格の中にも何か安心感があった。担当の方が現場に来てくれてジップラインを親身になって面白がってくれたんですよ。どんなワイヤが本当に適しているか分からないから、一緒に考えていきましょう・・みたいなところからいろいろ選定をしていって・・最終的に今の仕様になるまで何種類か変更しましたよね。
あと納期を含めて安定した供給が必要でした。自分たちで都度交渉したり海外製品を仕入れるとなるとすごく労力になるし、無駄なコストがどんどん重なって、せっかくいいモノがあっても導入できなくなる。いつもいろいろね。協力してもらって本当に助かってますよ。

ジップラインの設備としてはその後、専用のブレーキが開発されて時速40キロぐらいでも止められるようになって、さらに最近、ブレーキ付きトロリーっていう滑車が開発されました。最高時速は 120キロまで対応できて、急勾配でもトロリー自体がブレーキをかけて徐々に減速してくれる構造になっています。高価ですけどね。

設備の進化でジップラインは変わるか

カーブがですね・・もうあるんです、全長が2000mを越えるコースも・・
従来の仕組みでカーブを作ろうとすると、ワイヤを曲げる必要がありますよね。ワイヤを曲げるということは、どこかでワイヤを引っ張って曲げるしかないじゃないですか。そうするとその引っ張っている支点の上はどうしても滑車が通っていかないので、部分的にレールを使用することになるのですが、フランスのスキー場で先ほど話したブレーキ付きトロリーを使ったとんでもないコースが作られています。このトロリーはレールの上も走ることができるので、コースに支柱を設けることができます。少し衝撃はあるんですけど、勾配も調整できて滑走距離も伸ばせるので、日本の無支柱のジップラインと比べるとスケールは大きいと思います。ただ、大掛かりな設備の導入となると、投資を回収するための利用金額の設定と利用者のおサイフに折り合いをつけるのが難しいところです。
特に日本の場合は、建築基準法の存在が大きくて海外の物件を、そのまま参考にできるかというと決してそうではありません。スタート地点を少し高くするためのスタート台も建築物と見なされるので、海外のような簡易的な構造物では設置が認められませんし・・・
それと、レールを多く使うとレイアウトの幅は広がると思うんですけど、それはもうジップコースターというスタイルで、日本ではジップラインとは呼ばないんですね。ただ単に重力で滑っていく感じになるので・・・そこには手を出さずに、何か違う手法や組み合わせで価値を提供できればいいなと思います。スタッフには今まで以上の価値を提案するために、まず自分が楽しく仕事をしているか、自分が楽しいんだから自分たちのつくる商品は楽しいよっていうところをどうやって伝えるか?そんなことをみんなで考えてやっていこうと話しています。

お話を伺った方

株式会社プロジェクトアドベンチャージャパン
代表取締役
小澤 新也
まだ日本にほとんどロープスコースもなければ、アドベンチャーパークやジップラインの影もなかった時代に、右も左もわからないまま現場に放り出され、現場で学びながらビルダーとしての経験を積んだ後、現職に。
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